お知らせ

2019 / 06 / 24  17:05

鍜治屋 … 其の弐

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「ほおうっ … 他の二人は妻子とな、其の妻に

暴行を働こうとした男を斬ってし申たのだと。」

「はい、其の男は上役の息子だそうで。非は認め

るが跡継ぎを斬った事は赦せぬと、刺客を送られ

たそうにござる。」

「 … 其れで … 」

「其の折りは何とか凌いだものの、何時迄も防ぎ

切れるものでは無いと彼の国を後にしたそうにご

ざる。」

「其れで此の日本へ。」

「はい … 暫くは平和に暮らして居りましたが

此処最近何者かに張られて居る様で … と 。」

「成る程、其れで俺はナイフ と 。」

「はい。」

「なれど、張りし者らが追っ手ならば素性は知れて

し申たやも知れぬな。」

「はっ。」

「何とかしたいのか … 十四郎殿。」

「はぁ … 国は違えど、同じ鍜治屋の出なれば …

 素性が知れたとあらば一刻を争います故 … 何と

か成らぬものかと … 。」

「ふむ … … 十四郎殿、刺客を撃退したとあらば

腕は立つのであろう。」

「はい、某(それがし)とは五分 … いや、以上やも

知れませぬ。」

「ほおうっ … 得意な技は。」

「引き技、特に肉の筋を引き切る技は右に出る者居り

ませぬ。」

「ふむ … 妻子らは。」

「はい、お二人も中々の腕前だそうで。

 御内儀は菜っ切りを、御子息は皮剥きや飾り剥きを

得手として居る様でござる。」

「 … 肉の筋引きに菜っ切り … 皮剥きや飾り剥き

… 我らは魚捌きに其の仕上げ … ふむ … 」

「亀之助殿、何をお考えで。」

「うむ … 其方(そなた)、牛刀乃助(ぎゅうとうのすけ)殿を存じて居ろうか。」

「はい、畠山家の御重臣。」

「うむ、牛殿が申すには其の畠山家が近々一城を建て

るそうでの、此の亀之助を見込んで腕利きを集めて我が

元へ来ぬかと頼まれて居ったのだ。」

「しっ 仕官でござりまするか。」

「成らぬか。」

「いっ いえっ まっ真逆(まさか) わっ私(わたくし)の

様な者に しっ仕官の口が掛かろうなどと想うても居らぬ

事故(ことゆえ) … …」

「成らば決まりで良いな。」

「お待ち下され亀之助殿、あの家族も … 。」

「無論だ、異論か。」

「いえ、痛み入り申す。」

「気にせんでくれ、そうと決まれば一刻を争うのだあの家族

を迎えに行こう。」

「亀之助殿、其れは某(それがし)が。

 で、どちらへお連れ致せば。」

「うむ、実を申さば御城は完城間近なのだ。

 場所は井土ヶ谷でござる、其処へお連れし

て下され。」

「御城の御名は。」

「びすとろふうじん と申す

火偏に孚(ふ)と書いて人、ふうじん でござる。」

「 亀之助殿、びすとろ とは。」

「急げと言う意味と聞いたが良う知らん。

 急げと申さば、十四郎殿。やはり儂も行く。

 急ぎ参ろう。」

「はっ。」

 ⦅ … 想わぬ展開だ … 此の俺が侍とは …

 今から腕が鳴る。

 待って居れ びすとろふうじん。⦆

 

      … 今から18年前の事であった … 

 

      … つづく のか …