お知らせ

2023 / 07 / 25  11:57

お暑うございます … 其の十

お暑うございます … 其の十

白玉売り

白玉は寒晒粉(かんざらしこ)を水を以て之を練り

之を丸めて湯烹にしたるを伝 

白糖をかけて之を食す 或は冷水に之を加える

又 汁粉にも之を加えと雖(いえども)

陌上(はくじょう)売りは冷水に用いるを専(もっぱら)として

夏月(かげつ)之を売る

昔は全白を専(もっぱら)とする歟(か・や)

今は紅を交えて班玉(はんぎょく)をなす者あり

価百顆(かひゃっか)二十文ばかり

♠寒晒粉(白玉粉) : 餅米を水に浸して一晩置き 摩擦熱が生じ無い様に水挽き

     にするのですが 此の水に浸すという工程を冬の間続けて居た事から

     寒晒粉と呼ぶ様に成ったのでございます

♠陌上     : 畦の事を言うが 此の場合は路上の意である 

♠歟      : 緩い詠嘆や疑問の気を示す

♠顆      : 粒 丸くて小さなものを言う 此の文の場合は白玉百個で

         凡そ二十文程の様でございます

                            『 守貞漫稿 』

白玉売りは黒塗りの桶を天秤で担いで売り来(きた)り

其の売り声は

「 かんざらし~ 白たま 」又は「 ごぜんしら玉ア~ 」

                              ( 柳多留 )

「 四文が白玉岡に居て玉屋ア 」

此の御方は一椀を(何個入って居るのかは判じ兼ねますが)

四文で売って居た様でございます

         ⦅ 名所図会『江戸名所図会』(文政~天保)長谷川雪且画 ⦆

 

 

 

2023 / 07 / 25  11:52

お暑うございます … 其の九

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きりぎりす売り

きりぎりすは江戸近在の者 己と虫を捕らえ江戸に持ち出て売り歩く者にて虫籠

等も粗末の出来のみにして 荷ふ所の籠も極めて粗製なり

虫も種類少なく きりぎりす及びくつは虫位なり

然るに 代価は江戸の虫売りよりは余程安価なるより良く売れるなり

虫の出初は六月上旬より七月盆迄は盛んに売れしが 江戸の風俗にて盆には皆

飼置し虫を放つ よりて盆以後売口少なし

        ⦅絵本『江戸府内絵本風俗往来』(明治三十八年)菊池貴一郎画⦆

 

明治時代には 蛍は甲州物 きりぎりすは上総物が主に売られた様です

売り子たちは野生の虫を其の土地其の土地で集めて 東京見物を兼ねて行商した

との事

 

◉加筆修正中

でございます

2023 / 07 / 24  08:43

お暑うございます … 其の八

お暑うございます … 其の八

盆提灯売り

盆提灯売りは六月末から七月朔日(ついたち)迄の商いで 其の間町には多くの売

り子の姿が見られたとの事でございます 問屋の店先にも美しい絵提灯が一杯に

吊るされ大中小の髭骨(ひげぼね)提灯は瓜形 丸形 枕形 瓢箪形の数種があり

大は二尺余り中は尺八 尺五 尺三 小は尺以下なり 又子供の翫(もてあそ)び

の小形 瓜丸の二種にして 画は紅彩色(べにいろゑ)且藍画(あゐゑ)にて人物 山

水 花鳥 草花をゑがくのでございます 又白張に井桁に立花を図し髭題目を書

きしは法華宗向の品にして 散りし蓮華をゑがくは諸宗向成る可し 町方にては

江戸市中裏長屋の其の日を送る生計の家にても必ず灯すのでございます

                        『江戸府内絵本風俗往来』

 

 

髭題目 : 日蓮宗では南無妙法蓮華経の題目の「法」の字以外の文字の筆端を髭

     の様に伸ばして書く 

此の絵の盆提灯売りは天保(1830~1844)の頃の姿でございます

売り声は

「ちょうちんやア 盆ぢょうちん ちょうちんや ちょうちん」

江戸の盆提灯売りは本来白提灯を用いて居りましたが 文化(1804~1818)の頃か

ら此の白張も廃れ 小提灯や色々な形をした灯籠が使われ始めたのでございます

                ⦅ 絵本『街の姿』(年代不明)清水清風画 ⦆

 

 

2023 / 07 / 22  01:02

お暑うございます … 其の七

お暑うございます … 其の七

すすき売り

江戸の月見は陰暦の八月十五日と 後の月と言われる九月十三日の夜の二度あり

其の夜が近付いて参りますと すすき売りが路地の隅々迄売りに来(き) 人々は

小机の上に三方を置き 団子 枝豆 里芋 栗 柿等を盛り込み 花瓶には秋草

を活けて名月に供えるなど 大変盛んな行事だったのでございます

 

すすき売り女郎花な壱ほんまけ

                              ( 安二桜 )

茅をもて欺きけらし薄売り

                              ( 飾墨 )

        「 名所図絵『 東都歳時記 』(天保九年) 長谷川雪旦画 」 

 

2023 / 07 / 22  01:00

お暑うございます … 其の六

お暑うございます … 其の六

朝顔売り

朝顔売りは五月中旬から七月一杯迄の商いで 売り子は卸問屋から朝顔の鉢植え

を仕入れ 其れを売り歩くのでございます 毎日夜明けと共に出掛け 荷を売り

切って家に帰るのは昼頃に成り其れから一休みし 四時頃には翌日売り歩く鉢植

えを買い出しに問屋へと出掛けて行くのでございます

明治三十八年(1905)頃 入谷(いりや)に家号(屋号)を入種(いりたね) 植惣(うえそ

う)という二軒の朝顔の問屋がございました 園内には大小の土鉢に栽培した朝顔

が数千鉢 仕入れに来る売り子を未だか未だかと待って居たのでございます

朝顔の卸相場は大鉢が十鉢で三十銭内外 小鉢十鉢で六~七銭位のもので (此の

当時盛り蕎麦一杯の値段は二銭五厘) 朝顔売りが担う一荷の鉢数は大鉢で三十四

~五 小鉢で六~七十位のもの故 いくら肩の強い売り子であっても仕入れには一

円もあれば十分でございます 売り値は客次第にて色街などでは三銭の卸値のも

のを十銭と高値で売る強者も 居った其うにございます

 

四ツ前の格子へ負る蕣(あさがお)屋

                             ( 俳諧攜 )

♠ 蕣はムクゲと読む場合もございます

♠ 俳諧攜の攜は手偏では無く 角偏なのでございます 

           音 : ケイ

           訓 : くじり・つのぎり

       くじりとは : 男子が腰に佩びる角器(象牙等)で 先が尖り紐の

              結び目を解くものなのでございます

 

 

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